消化器内科
消化器内科では、食道、胃、小腸、大腸のほか、肝臓、膵臓、胆嚢など広い範囲の疾患を扱っております。
主に下痢や嘔吐などは比較的によくみられる症状ですが、その原因を追究することが非常に重要です。
症状はお薬によって治るが、また繰り返し下痢、嘔吐がおこる場合、消化管内に自己免疫疾患や腫瘍が隠れている可能性があります。
超音波検査により消化管の内部構造を確認し、異常が認められた場合、その原因に対して治療を行ないます。
猫の膵炎
どういう病気なの?
食欲不振、嘔吐、元気消失、体重減少など非特異的な症状かつハッキリとしない症状のことがあり、年齢に関係なく膵炎が発生すると考えられています。
猫の膵炎では特徴的な三臓器炎という病態が認められることがあり、膵炎、胆管肝炎、炎症性腸疾患(IBD)の3つが併発するものです。そのため肝臓、消化管についても評価や治療に対する検討が必要になります。
どうやって治療するの?
近年では膵特異的リパーゼが利用可能になったことで膵炎の確定診断をすることが増えてきました。血液生化学検査では従来から用いられていたアミラーゼ・リパーゼは意義がなく、猫膵特異的リパーゼが最も信頼性のある血液検査です。
鑑別診断や膵炎の症状、また併発疾患の評価に血液検査、超音波検査、レントゲン検査などを行う必要があります。
重篤な合併症であるDIC(播種性血管内凝固症候群)の検査に凝固系検査が必要となることもあります。
膵炎の治療方法は?
残念ながら現在では膵炎に特異的な治療法はなく、支持療法が中心になります。十分な輸液、疼痛管理、制吐剤と共に、猫では長期の絶食は肝リピドーシス(脂肪肝)を招くためになるべく早く栄養補給が必要となり、食欲がない場合には強制給与または食道チューブや胃チューブなども行うことになります。炎症性腸疾患や肝疾患が併発した場合には積極的に治療を行います。
再度なってしまう危険性が高いことを常に考えなければなりません。合併症も多く重篤な状態に陥ることも多いため、膵炎に対する十分な治療が必要となります。
消化管内異物
どういう病気なの?
幼少期のワンちゃん、ネコちゃんに多く見られる疾患の一つに消化管内異物があります。
おもちゃに熱中して遊ぶうちに飲み込んでしまう、固いおやつを丸呑みした、りんごやトウモロコシなど芯のあるものを食べてしまった等により、消化管内に閉塞をおこしてしまう場合があります。
吐きや下痢などの症状がつづき、次第に痩せていってしまうため、早期にしっかりと診断し、摘出する必要があります。
どうやって診断するの?
診断は主に造影剤を用いて、X線検査にておこないます。
また、異物だけでなく、胃や腸管にできた腫瘍などの可能性もあるため、超音波診断によって内部構造を確認します。
どうやって治療するの?
詰まっている場所が特定できた場合は、その場所や大きさに応じて
- 外科手術による摘出
- 内視鏡による摘出
が行われます。無事に摘出した後も、消化管の狭窄などに注意し、内服薬によるフォローが必要となります。
食道内に異物が確認された症例
白い部分が造影剤で、食道内に停滞していることがわかります。
内視鏡による食道内
写真の茶色い物が詰まっていたおやつ。
摘出後も食道粘膜に糜爛が確認されています。
巨大食道症
どういう病気なの?
食べ物が通るときだけ広がる食道の筋肉が弛緩してしまい、常に広がっているため、食後に吐出という症状をとります。
食べたものが吸収される小腸まで届かないため、痩せていってしまう病気です。
どうやって診断するの?
通常のX線検査で診断可能です。
X線画像にて食道の拡張が疑われ、造影しています。
どうやって治療するの?
基礎疾患があるケースが多いため、その原因を追求し、その治療を行います。
重症筋無力症(抗Ach-R抗体の検査)、胸腺腫、内分泌疾患などの検査をします。
また、栄養状態を改善するために胃や腸にチューブを設置する場合もあります。